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2014年4月9日水曜日

筒井康隆『文学部唯野教授』(岩波現代文庫)

いやあ、暴力的なまでに面白い。ほぼ20年ぶりに読み返したが、どうしてこんなに引き込まれるのだろう。もちろんほぼ四半世紀前の本ということで、いい具合に古びているのだがそこがいい。この20年間に日本文学はお行儀がいい、誰にとっても恐くないものに成り果ててしまったのだと気づかされる。そして筒井康隆が現在も生き、書き続けていることがどれほどの僥倖かということがよくわかる。
以前読んだときは大学人の生きざまにばかり目が行ったが、今回は各思想家の紹介の仕方に深く感心した。どの思想家の著作もちゃんと読んで書いていることがよくわかる。これは、なかなかできることではない。しかもそれを本当にわかりやすく、学部生にも楽しめるように翻訳しているのだから凄い。とくにハイデガーのところなんて、本当に優れている。
大胆な通俗化、単純化も恐れず突き進む筒井康隆の姿勢に圧倒された。文学とその読者に対する強い愛に基づいていなければできないことだ。