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2014年4月1日火曜日

金原瑞人『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』(ポプラ文庫)

あまりにも洒落たタイトルが本当のことだと知って驚く。経緯は本を読んでください。訳書300冊以上(!)であり、マイノリティ文学から古典まで幅広くてがけ、日本にヤングアダルトという概念を定着させた偉大なる金原さんの著書。
軽い親しげな文体で書かれているこの本だが、その芯にはものすごく筋の通った意志が感じられる。文学賞をとっていなくても、読んでみて面白ければ訳してみる。落ち穂拾いのごとく、マイナーな作品でも気に入れば粘り強く出版社と交渉し続ける。読者にすれば当たり前のことでも、実際に翻訳者となれば、それをやり通すことは難しい。しかも30年も続けているとは。ただただ頭が下がるばかりだ。
僕がドミニカ共和国出身の作家、ジュノ・ディアスの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』なんかをスッと訳せたのも、金原さんのような先輩が本の世界を拡張していたからだということがよくわかる。本当にありがとうございます。