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2015年9月12日土曜日

岩城けい『Masato』書評書きました

『すばる』2015年10月号に岩城けい『Masato』の書評を書きました。
以下のリンクで全文を読むことができます。
http://subaru.shueisha.co.jp/books/1510_2.html
これほど日本から外国に同化していく過程を正確に捉えた作品は珍しいのではないでしょうか。英語圏の文化に抵抗する親と、その親に不満を抱く子供というのは、外国に移住した家族では普通の光景でしょうが、それが日本語で詳細に記されたというのは大きな意味があることだと思います。
英語が支配的な環境で、子供が何を行っているのか親が聞き取れなくなると、力関係まで逆転してしまうというのが恐ろしいところです。こういうのは、ジュノ・ディアスなど移民文学にはよく登場するモチーフですよね。
前作『さようなら、オレンジ』(ちくま文庫で今月出ました)もすごく面白かったのですが、今回の作品は文章の質も格段に向上して、読んでいて楽しい作品になっています。数年でこれほどの進化を遂げるというのは素晴らしい。
日本で普通に文学と考えられている作品とは趣は異なりますが、本作もまたすごい達成だと思います。