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2015年9月20日日曜日

『本の雑誌』10月号新刊めったくたガイド書きました

『本の雑誌』10月号の新刊めったくたガイドを書きました。
今回取り上げた本は以下の通りです。

チョン・セラン『アンダー・サンダー・テンダー』(吉川凪訳、クオン)
ウーリー・オルレブ『走れ、走って逃げろ』(母袋夏生訳、岩波少年文庫)
エドゥアルド・メンドサ『グルブ消息不明』(柳原孝敦訳、東宣出版)

チョン・セランの『アンダー・サンダー・テンダー』は韓国と北朝鮮の国境に近い町で繰り広げられる、ちょっと懐かしい青春物語です。主人公がドラえもんの弁当箱の話をしたり、登場人物の姉弟が安藤忠雄風の建築に住んでいたりして、急に出てくる日本アイテムにはドキッとさせられます。本当に繊細な物語で、素晴らしい作品だと思います。最近クオンはすごくいい書物を次々と出していますよね。

ウーリー・オルレブ『走れ、走って逃げろ』は少年がナチスの追跡を逃れてポーランドの森に入り込みます。実話が元になっているからでしょうか。表現がリアルで、読んでいで息つく暇もありません。時に親切にしてくれる人もいて、人間の残酷さと美しさがよくわかる作品です。エトガル・ケレット『突然ノックの音が』もそうですけど、母袋さんは素晴らしい作品を訳されていますよね。

エドゥアルド・メンドサ『グルブ消息不明』はスペインの作品で、地球にやってきた宇宙人が行方不明になった相棒を探して回る、というものです。舞台はバルセロナで、現代のスペインをポップに描いています。中南米の作品に比べてスペインのものはあんまり読んでいないんですけど、これはすごく面白いですよね。どうやってこういう作品を見つけてくるんでしょうか。素敵です。