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2017年1月8日日曜日

『本の雑誌』12月号の新刊めったくたガイド書きました

 『本の雑誌』2016年12月号の新刊めったくたガイド書きました。
http://www.webdoku.jp/
取り上げたのは以下の三冊です。

温又柔『来福の家』(白水uブックス)
金仁淑『アンニョン、エレナ』(書肆侃々房)
内澤旬子『漂うままに島に着き』(朝日新聞出版)

温又柔の『来福の家』復刊はとにかくめでたいです。日本人とは何か、日本語とは何かという問いと、実際に日本で外国人として生きていくということが正面から組み合った、優れた作品になっています。特に「幸去幸来歌」はお勧め。現代の日本文学がどこまで来ているのかが良くわかる作品です。
金仁淑『アンニョン、エレナ』が翻訳されたのは素晴らしい。現代の韓国文学に如何に多国籍な声か響いているかが良くわかる作品です。アメリカに渡った親戚、ポルトガルから届いた、異父妹からの手紙。書肆侃々房という福岡の出版社から出ているのもいいですね。ここは現代歌人のシリーズを出したり、今村夏子の新作『あひる』を出したりと、とても意欲的です。
内澤旬子『漂うままに島に着き』は東京に嫌気がさした著者が小豆島に移住し、気持ちのいい人生を手に入れるまでの顛末が綴られています。これを読むと、東京が中心という考え方がいかに古くさいものかが良くわかります。『世界屠畜紀行』『身体のいいなり』など、内澤さんの仕事は現代社会で見えないことになっているものを引き出すのが上手いですよね。どれも名著です。