2014年3月18日火曜日
坂口恭平『モバイルハウスのつくりかた』(竹書房)
坂口恭平『モバイルハウス、三万円で家をつくる』 (集英社新書)がすごく面白かったので、そのDVD版であるこれも見てみた。いやあ、いいなあ。見ながらずっと笑顔になってしまった。隅田川の鈴木さんや多摩川の船越ロビンソンなど、自力で家を建ててきた猛者が丁寧に坂口さんにやり方を教えてくれる。大人が本気になって秘密基地を作っているなんて、なんだか自由だ。土地を買わずに自力で家を建ててしまうということの思想的な意義も大きいけど、何より世代を越えた愛情と知識のやり取りが気持ちいい。坂口さん、いい青年じゃないか。
2014年3月17日月曜日
江國香織『江國香織とっておき作品集』(マガジンハウス)
収録されているデビュー作の中篇「409ラドクリフ」がとにかく素晴らしい。舞台はアメリカの大学で、日本から留学している女性とルームメイトのハンガリー人、そこに恋愛相手のナイジェリア人などが絡む。作品に流れている雰囲気、匂い、感覚は完全にアメリカで、実は江國香織は日本語でアメリカ文学を書いて作家になったのだということがよくわかる。彼女はこの作品でフェミナ賞を受賞した。
お互い日本に恋人がいるのに、異国での暮らしの寂しさに耐えきれず求め会ってしまう男女なんて、ジュノ・ディアス「もう一つの人生を、もう一度」の主人公が語る名言「どんな愛もこの海を越えることはできない」を思わせる。他にも、人種を越えた困難な愛、国籍を取るための偽装結婚、日本からやってきた人が過度に日本的に見えて少しひいてしまう感じなど、アメリカに住んだことがある人にすればどれも自分で感じた、あるいは見聞きしたことはあるようなトピックが次々出てくる。僕も読みながら、ロサンゼルスに住んでいた10年前の感覚に戻ってしまった。
今の洗練された江國香織とはまた違う魅力が味わえる。読者により入手しやすいかたちで再刊されることを強く願う。
お互い日本に恋人がいるのに、異国での暮らしの寂しさに耐えきれず求め会ってしまう男女なんて、ジュノ・ディアス「もう一つの人生を、もう一度」の主人公が語る名言「どんな愛もこの海を越えることはできない」を思わせる。他にも、人種を越えた困難な愛、国籍を取るための偽装結婚、日本からやってきた人が過度に日本的に見えて少しひいてしまう感じなど、アメリカに住んだことがある人にすればどれも自分で感じた、あるいは見聞きしたことはあるようなトピックが次々出てくる。僕も読みながら、ロサンゼルスに住んでいた10年前の感覚に戻ってしまった。
今の洗練された江國香織とはまた違う魅力が味わえる。読者により入手しやすいかたちで再刊されることを強く願う。
2014年3月16日日曜日
坂口恭平『モバイルハウス、三万円で家をつくる』 (集英社新書)
いやあ、面白いね。坂口の体が動くと風景が違って見えてくる。たった3万円で家を作ると決意して多摩川の河川敷に行けば、ロビンソンさんという名の長老が現れて、凄まじい智恵を伝授してくれる。動いて、出会って、教わって、作って、考える。フィールドワークものになると坂口恭平は無敵だ。
ロビンソンさんの「なんでも簡単に買うのではなく、自分でつくったら〇円で手に入るし、好きなようにできるから楽しいでしょ」 というのは至言である。自分で作り、余ったものはどんどん人にあげてしまう。人間関係こそが財産。
ここにはレヴィ=ストロースのブリコラージュも、マルセル・モースの『贈与論』もある。「人が欲しがらないものを欲しがることこそが、寄生しない自由な生活を実現させる。」(116)なんて、まるで今西錦司の棲み分け理論ではないか。坂口の本を読むと心の風通しがよくなる。
ロビンソンさんの「なんでも簡単に買うのではなく、自分でつくったら〇円で手に入るし、好きなようにできるから楽しいでしょ」 というのは至言である。自分で作り、余ったものはどんどん人にあげてしまう。人間関係こそが財産。
ここにはレヴィ=ストロースのブリコラージュも、マルセル・モースの『贈与論』もある。「人が欲しがらないものを欲しがることこそが、寄生しない自由な生活を実現させる。」(116)なんて、まるで今西錦司の棲み分け理論ではないか。坂口の本を読むと心の風通しがよくなる。
2014年3月15日土曜日
坂口恭平『坂口恭平躁鬱日記』(医学書院)
強烈な文章が目白押しだ。これは坂口恭平の最高傑作なのではないか。2013年4月から7月までのほんの四カ月の日記なのだが、意識の流れのまま書いてある。読んでいて自由な気持ちになる。娘のアオちゃんと妻のフーに支えられ、彼女たちとの関係に多くを学びながら坂口恭平が生き抜いていくリアルな記録だ。子供の力ってものすごい。
もちろん躁状態の激しさと鬱状態の辛さは凄まじい。作中では主に薬物療法のみを行っているのだが、認知療法や食事療法など、他のやり方も併用したらいいのではと勝手に思ってしまった。こんなに面白い人に死なれたら困る。
医学書院の「シリーズ・ケアをひらく」はとてもいい。澁谷智子さんの『コーダの世界』も素晴らしかった。こうした本にこそ、僕は今、文学を感じる。
もちろん躁状態の激しさと鬱状態の辛さは凄まじい。作中では主に薬物療法のみを行っているのだが、認知療法や食事療法など、他のやり方も併用したらいいのではと勝手に思ってしまった。こんなに面白い人に死なれたら困る。
医学書院の「シリーズ・ケアをひらく」はとてもいい。澁谷智子さんの『コーダの世界』も素晴らしかった。こうした本にこそ、僕は今、文学を感じる。
2014年3月14日金曜日
永井一郎『朗読のススメ』 (新潮文庫)
波平さんの声で知られた永井一郎の名著。スタッフの評価も観客の評価も忘れて、リラックスしながら、ただひたすら伝えたいイメージに集中する。そしてそれを繊細に表現する。「とちりたくない。上手に読みたい。笑われたくない。ほめられたい。感動させたい。自分、自分、自分。自分の欲望しか見えない状態。これではプレッシャー地獄です」(24)。自分地獄から出たとき初めて芸の世界が開けてくるのだ。
これは朗読だけでなく、翻訳にも、執筆にも、いや、どんな仕事にも当てはまることなんじゃないか。深いシンプルさが心を打つ。「自分を捨ててください。よいものも悪いものもみんな捨ててしまえばいい。必要なものはいつでも取り戻せます。」(59)もはや禅だ。我執の断捨離だ。
「技術は手に入れろ。手に入れたら忘れろ。」(157)は至言である。まさに現代の花伝書ではないか。
これは朗読だけでなく、翻訳にも、執筆にも、いや、どんな仕事にも当てはまることなんじゃないか。深いシンプルさが心を打つ。「自分を捨ててください。よいものも悪いものもみんな捨ててしまえばいい。必要なものはいつでも取り戻せます。」(59)もはや禅だ。我執の断捨離だ。
「技術は手に入れろ。手に入れたら忘れろ。」(157)は至言である。まさに現代の花伝書ではないか。
2014年3月13日木曜日
エーリッヒ・フロム『愛するということ』(鈴木晶訳、紀伊國屋書店)
凄まじいほどの名著。みんなどうしたら愛されるかばかり考えているが、本当は愛することが大切だ。そして愛することには努力と訓練が必要である。こうしたフロムの主張に驚愕する。だったら、愛されヘアもモテ仕種も金も地位も名誉も全く関係ないことになるではないか。現在の資本主義を形作っているものすべてを否定し尽くしたあとに残るのが愛することだというのは、もはや革命運動だ。
結局のところ僕も、自分の価値を高めることでより多く愛されたいという悲しいエゴマニアでしかなかったと思う。そんな自分の壁を乗り越えることができるのか。フロムの言葉がぴったりと心に寄り添ってくる。どうして今までフロムのすごさを誰も教えてくれなかったのか?
結局のところ僕も、自分の価値を高めることでより多く愛されたいという悲しいエゴマニアでしかなかったと思う。そんな自分の壁を乗り越えることができるのか。フロムの言葉がぴったりと心に寄り添ってくる。どうして今までフロムのすごさを誰も教えてくれなかったのか?
2014年3月12日水曜日
スーザン・ソンタグ『反解釈』(ちくま学芸文庫)
ものすごく厳密に、ぐうの音も出ないほど対象を追い詰めていく作家や批評家が僕は大好きで、なぜだかそれは女性が多い気がする。たとえばマーガレット・アトウッドやジョイス・キャロル・オーツなど、人のずるさや自己弁護を呵責なく暴く作家たち、スーザン・ソンタグやハンナ・アレントなど、凄まじい鋭さで徹底的に悪を論じきる批評家たちで、読んでいると本当に気持ちがいい。男らしいという言葉はこういう人たちのためにあるのではないか。
ソンタグの『反解釈』は、「キャンプについてのノート」という論文がいい。現代における不自然の美学について論じたこの文章を読んでいると、アンディ・ウォーホルの映画の感じとかが甦ってくる。僕はこういうものが好きなんだな、と素直に思える。なまじっかなポストモダンの理論より、よっぽど現代の芸術のあり方をしっかりと掴んでいる。ジョージ・ソーンダーズやジェフリー・ユージェニディスなんかの現代アメリカ文学を読む上でもすごく役に立つのではないか。
ソンタグの『反解釈』は、「キャンプについてのノート」という論文がいい。現代における不自然の美学について論じたこの文章を読んでいると、アンディ・ウォーホルの映画の感じとかが甦ってくる。僕はこういうものが好きなんだな、と素直に思える。なまじっかなポストモダンの理論より、よっぽど現代の芸術のあり方をしっかりと掴んでいる。ジョージ・ソーンダーズやジェフリー・ユージェニディスなんかの現代アメリカ文学を読む上でもすごく役に立つのではないか。
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